ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第10回-1 大阪市天王寺動物園 「本来の生態の魅力と威力」:
ヨウスコウワニさんの冬眠と繁殖♪ ①準備 (2017.4.8 up)
皆さん、ヨウスコウワニさんについて、どれだけ知っていますか?私は正直申し上げて、「ヨウスコウワニさんという名前なのだから、揚子江で暮らしているんだろうなぁ・・・」くらいでした(^^;)。多くの皆さんが、同様であるに違いない(笑)。しかーし!そんなヨウスコウワニさんの生態を少し知っただけで、ガゼン興味が高まり、ヨウスコウワニさんが記憶と心に在住完了したのです★これは、「私とヨウスコウワニさんの関係性(心のつながり)が太くなった」ということで、この実現こそ、園館の任務である「保全」なのです(保全=この星で、動物と人が一緒に幸せに暮らし続けるようにすること。そういう発想と行動を持てる人を増やすことが、「保全活動」)♪そしてそのポイントは、「動物本来の生態の、魅力と威力」です♪その動物本来の生態は、それだけで十分に魅力的です!でもそれは、見ただけで全て理解できるものではなく、「説明されなきゃ分からないけど、説明されれば分かる」のです♪説明により、その動物の魅力の威力が増すのです♪つまり、園館では、「動物が生態のままに暮らせるようにすること」と、「その説明」が、最大の任務であり存在意義であり持続性(利益)を生むものであると、私は考えています♪そのような園館の真髄を、努力と熱意で実現している飼育員さんが、大阪市天王寺動物園の三宅さんです♪今回は、あえてヨウスコウワニさんだけに絞ることで、「とある1種に特化して説明することの威力」もお伝えしたいと意図しています♪ぜひヨウスコウワニさんとの関係性(心のつながり)を、太くしてください♪(現在三宅さんはヨウスコウワニさんの担当ではありませんが、担当時の努力の素晴らしさをお伝えするべく、記事にさせて頂きました♪) (全2ページ)
こちらがヨウスコウワニさん(♂)です♪つぶらな瞳と、ゴツゴツした姿と、渋い色合いが素敵です♪
揚子江の下流域在住の固有種で、絶滅危惧種。大きさは2m以下、おとなしい性格だそうです♪貝などの硬いものを食べるため、口が短めです。
河川や池などで暮らし、冬は4ヵ月ほど冬眠、秋に繁殖します。園館内でこうした生態をどれだけ再現できるか、ヨウスコウワニさんにとって当たり前の選択肢をどれだけ用意できるか・・・その努力を継続できるだけの人材+財政+施設=本気度がその園館にあるのか?
こうしたことが、園館に存在意義と持続性があるかどうかの分かれ道なのです♪
ヨウスコウワニさん宅の全景。右側が屋外となっていて、外気外光が入り、温度変化もあります♪コンクリやガラスの中だけで生きる動物は本来いないので、大事なことです♪
三宅さんが担当になった時、「(ワニさんが)生きてはいるが飼育環境がいいかは分からないので調べたところ、やはり環境に左右されると分かった」そうで、環境づくりにも励んでいます♪本来の生息域は気温がマイナスになることもあり、大阪市の気温は少し似ているとのことで、よかったです♪
担当の三宅さんです♪現在の、大阪市天王寺動物園活性化の起点はこの方だと、私は考えて尊敬しています♪
三宅さんが手を置いている構造物の中が、冬眠場所(巣穴)です♪「冬眠→繁殖」という流れがあるということで、繁殖計画の一環としての冬眠だそうです。目的はなんであれ、本来の生態通り冬眠できるようになって、よかったです♪
冬眠をする巣穴には、11月頃、寒くなると入ります。巣穴は出入り自由になっていて、3月頃に出てきます。冬眠するワニさんがいるって、知ってました?!私はそれだけでも衝撃的でした♪
巣穴の中に入れる土です。野生では、地面を長い距離掘って冬眠するので、「掘る」「土」という選択肢が重要です。「山土とピートモス」「砂とピートモス」、他にバーミキュライトや枯葉など、素材をブレンドして用意しています♪
土の質を2種類用意し、ワニさんが選べるように、巣穴を2室に分ける工夫もしたそうです♪そうして土を入れたところ、翌日さっそく掘ったそうです♪
生息地に近い環境を用意したいという熱意により、背の高い草が植えてあります♪大変な作業だそうですが、ヨウスコウワニさん、ちゃんと満喫しているようですよ♪
野生では、枯れた草を倒し、その発酵熱を利用して卵を温めます。大阪市天王寺動物園のヨウスコウワニさんも、草の上を歩いたり、草が倒れていることでそこに行ったんだなと感じさせてくれるそうです♪本来の行動ができる素敵さは、きっとワニさんが一番感じていると思います♪
さらに、手前に湿地帯も作ったそうです♪水位も、雨季には上げて、水中での交尾ができるよう、工夫しています♪
屋外部分で日光に当たることも、大事で有効です♪本来の行動が引き出されるかどうかは、紫外線の量にも左右されます。また、ここのヨウスコウワニさんたちのウロコがツヤツヤ&立派にゴツゴツなのは、自然光のおかげもあるそうです♪
日光浴ゾーンの魅力を高めるべく、草をさらに用意したところ、ワニさんたちにはさしてウケなかったそうです(笑)。いいんです、こうした飼育員さんの前向きな試行錯誤が、動物と来園者の幸せにつながるのです♪動物の選択肢を増やす飼育員さんの努力は、園の強力コンテンツなのです♪
ここのヨウスコウワニさん(写真は♀)が美人さんなのは、冬眠のおかげかも♪冬眠すると、ウロコのツヤが全然違うそうです!きっと、体調もいいはず♪
そんな冬眠と繁殖に向け、食事改善も行いました♪本来食べている小型哺乳類をメインにし、繁殖時期(5~6月)には、主食の貝類も用意♪
ちなみに冬眠前後は全く食べないそうで、なんと、5~10月の半年しかごはんを食べないとは、すごい生態でびっくりです。でもそれが本来の生き方なので、冬眠をしないで一年中食べる生活を送ってしまうと、不自然で太ってしまうのです。
ちなみにワニさんたちの健康状態は、尾の付け根や腹回りにあらわれ、飼育員さんは見てすぐ分かるそうです♪
本宅の左には、室内宅があります。以前は寒い時期はこちらで冬眠せずに過ごしていました。が!本来の生活に近づけるべく、きちんと準備をした上で、屋外部分のある本宅に出入り自由にしてみたところ、すぐに自分で出て行ったそうです♪このように、選択肢を用意して、動物が自分で選べるようにすることが、「動物の幸せ」という答えが確認しにくい目標に近づく方法のひとつです♪
こうした、飼育員さんによる様々な準備努力の結果だと私は思うのですが、「生まれてこのかた冬眠したことがなかったのに、準備をしたら1年目からちゃんと自発的に冬眠し、無事に目覚めた」そうです!♪