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ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第17回 金沢動物園 「動物にマッチした環境づくり
①足にマッチした寝室♪その1

 今回は、金沢動物園(横浜市)のインドサイさん宅をご紹介します♪担当飼育員さんの先﨑優さんは、「(園館動物が)慢性的に不調なのは、環境とマッチしていないから(先天的なもの・加齢によるものを除く)」「環境を整えてあげれば、動物は自然と健康に過ごす」と考えて、インドサイさんにマッチした環境づくりに取り組んできました。サイさん目線で考えて実践し、結果からまた考えて改善を続け、今ではインドサイさんたちは2名とも健康状態良好です♪その取り組みを発表されたり、国内外の動物園から求められて情報提供などもされています♪

 園路から見ただけでも驚きますが、実際に中で体験するとさらに驚く「インドサイさんにマッチした環境づくり」を、ぜひご覧ください♪ (全3ページ/2018.2.1 up)

​ ゴポンさん(♀18歳)と先﨑さん♪

​ インドサイさんはご覧の巨体なので、足に負荷がかかります。インドサイさんにマッチした環境づくりをして、インドサイさんに本来備わっている体の仕組みが発揮できるようにすることで、その負荷を軽減することが重要となります。

 足の負荷軽減には、地面の硬さや質などの状態が重要!特にインドサイさんは湿地暮らしですので、柔らかい地面に適した体となっています。

​ 先﨑さんは「野生の生態に答えを求め、それを動物園に落とし込む」という考え方をするそうです。

 ということでなんと、インドサイさんたちの寝室は自然物モリモリでふかふかで柔らかです!♪

​ 3トンの巨体が乗っても、つぶれずふかふか♡さらに、自然物のいい香りもします♪

 実際に体験して知りましたが、快適空間です!

 インドサイさんの足です。インドサイさんは、世界中どの動物園でも、足を痛める例が多いそうです。金沢動物園のインドサイさんも足を悪くしていました。

​ ということは動物園の環境になにか問題があると、先﨑さんは考えました。そして、担当になった2010年から取り組みを開始。

 以前に設置されていたゴムマットは効果が薄かったので、変えるなら口に入っても大丈夫な自然物にしようと、タタミや枝を敷いてみました。

​ しかし劣化が早いなどの難点があったことと、より柔らかいもので既にあるものがよいということで、ワラになりました。

 ワラ選びも、試行錯誤を繰り返して模索しました。炭素(かたくて腐りやすい)と窒素(分解が早い)の比率で検討。麦わらや稲わらなど、炭素が多いものが適していると考えました。

 その中で、麦わらが安くて入手しやすかったので、ベースの素材に採用。

 他は、チモシー・スーダン・ルーサンなど、サイさんたちの食事の残りです。残滓はすべて床材となります。

​ こうした環境づくりにより、足は5年で完治♪その後の再発も起きていません。

 寝室はすべてご覧のふかふかぶり♪では、掃除はどうするのでしょう?

 うんこの掃除は、拾えばいいのでそんなに大変ではないそうです。

 尿は、一番下にグレーチング(排水溝のフタ)を設置することで抜けます。これにより、ワラの水分管理がしやすくなります。

 ワラを敷く厚みは、最低40cmあると大丈夫とのこと。中途半端だと、サイさんが踏んだ時に尿が上に浸み上がってきて、汚れが広がり不衛生に。

 ワラの上を歩いた時に水の音がしたり(保水力が弱まっている)、強い臭いがしてきた時が交換のタイミングとのこと。大量に交換するのは、やはり大変だそうです。

 そもそも、「汚れる」とはなにか?ハエさんが出なければ衛生的なのか?なども考えたそうです。

 そして「発酵床(バイオベッド)」という管理法があることを知り、参考にしました。 

 近くの山から腐葉土を運び入れ、現地のバクテリアさんも活用。バクテリアさんが糞尿を分解しつつ発酵します。

 インドサイさんは、バクテリアさんなどが多い湿地で暮らす生態であるため、可能な手法と考えています。

​ 写真のキンタロウさん(♂34歳)は、年を重ねたこともありますが、ふかふか寝室にしてから穏やかになったような気がするそうです♪

 発酵しているので、ワラが暖かくて驚きます。中心温度は、50度以上になることも。

 大事なことは「柔らかさ」ですが、冬は暖かさも有効。夏は発酵しないよう、「石灰を撒いてペーハーを変える」「水分を調節」「部分的に土を入れる」などの対策をしています。

​ サイさんたちが好きな場所を選べるようにもしていますが、それでも夏でもワラの上で寝たりもするので、熱中症予防で扇風機を用いることもあります。

​ 理想を言えば、土で同じ厚みを実現できると、柔らかさが用意できて温度が上がりません。でも現状の施設においては土は無理なので、ワラを使用して発酵させて管理する方法を採用しました。

 取り換えの頻度が高い場所は、短いワラのほうが便利だそうです。

 こうした数々の工夫により、先﨑さんは基本的に一人でこの自然物モリモリ床を維持管理しています。

​ 「自然物=超大変」というイメージをも改善して下さっています。

 「自然物=詰まったり挟まったりして大変」というイメージもいまだ根強いですが・・・

 例えば扉のレール部分。ワラは細くて柔らかいため、絡まってマットのようになり、こぼれにくいそうです。もちろんゼロではないので模索中でもあります。ウッドチップだとこぼれて挟まります。

 さらに、構造的に「手動」であることと「ロックピン」があることが有効でした。万が一レールにワラが挟まっても、扉を途中でロックしてサイさんを外にとどめたまま掃除がすぐにできます。

​ ちなみに排水口が詰まることもありません♪

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