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ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第23回 西海国立公園九十九島水族館 海きらら 「飼育員さんの声
~仕事について・取り組んでいること・これからしたいこと・学生さんへのメッセージ~
​③魚類班その1♪
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 魚類班リーダーの百武(ひゃくたけ)さんにお話を伺いました♪百武さんは、ご自身で希望して、写真の「荒磯水槽」を担当中♪その理由はズバリ「海藻」です!

 海で暮らすお魚さんたちにとって、海藻さんは近くにあるのが当然の大事な存在です。水槽の中でもなんとか海藻さんに生きて頂きたいのです。

​ 海藻さんは波のあるところでよく育つので、波の大きい荒磯水槽で育成に挑戦中♪

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 水槽内で海藻さんに生きて頂くことは大変に難しく、この大きさになるのに一年かかりました!しかも、海から採って来ないで実現できるよう、流れ藻の胞子から育てました!♪

 海藻さんの有無で、お魚さんたちの様子が全く違うそうです。海藻さんは、「海のゆりかご」と呼ばれています。お魚さんたちが卵を生んで付けたり、隠れたり、かじったり、小さいエビさんがいるので食べたり・・・♪

​ 海藻さんがいるとお魚さんたちがうれしそうなので、モジャモジャになるほど増やしたいとのこと♪写真のお魚さんは、横縞に見えるのがカゴカキダイさんで縦縞に見えるのがイシダイさんです♪

(「見える」と書いたのは、お魚さんたちの縞模様は、「背骨に沿った方向のものを縦縞とする」そうです!なので見た目が縦縞にみえているほうが、実は「横縞」。)

 さらに、海中で百武さんが実際に観察した海藻さんのサイクル(春を過ぎたら芽だけになったり)を水槽でも再現し、環境について伝えることも目標です♪

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 海藻さんの足元を見ると、点のような面積で岩にくっついていて驚きます。脆弱な労働環境で意欲と能力を開花させている飼育員さんたちを思い出す姿です。

 百武さんにも「なぜ安い給料でがんばれるのか?」を質問させて頂いたところ、「普通に働いているつもりと言いますか、むしろ足りないと思っています」と・・・

 「お魚さんは本来なら海で過ごすのが普通なのに、自然でない水槽で暮らしてくれています。でも、お魚さんのことを知らなかったら大切にしてもらえないし、未来に残らない。海の生き物や環境について伝えたい、知って頂きたい。そのためにお魚さんたちに水槽で暮らしてもらっています。」

​ 飼育員さんは「動物が好き」なのに「不自然な施設暮らしでがんばってくれている動物と毎日向き合う」という現実に直面し続ける仕事でもあります。だからこそ、そこで動物のために何をするかが、大事なのだと思います。

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 百武さんが担当している「荒磯水槽」には、お魚さんたちの隠れ場所がたくさん♪全員発見するのは至難のわざですが、それだけ「探す楽しみ」がテンコ盛りということです♪

 実は百武さん、水族館で働く前は水槽のお魚さんをかわいそうと思っていたそうです。地元出身で子どもの頃から船でよく島に行って海に接していたそうで、お魚さんたちは「海にいるのが自然だと思っている」とのこと。

 水族館のお魚さんたちが幸せかどうか、「分からないので向き合ってみた」。答えはまだ出ていないそうです。

​ でも、こんなふうに真正面から逃げずに考えて下さる飼育員さんがいること自体が、水族館のお魚さんたちにとっても私たち来館者にとっても、希望の星だと思います♪

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 「砂のない海はない」ということで、魚類班の担当水槽には砂が敷いてあります♪

​ ウミガメさんが感じる感触も、がぜん違うことでしょう♪

​ ちなみに砂は中の微生物さんたちの働きにより、掃除をしないでもきれいに保てるそうです♪

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 砂があるほうが断然よいそうで、例えばエイさんが潜って落ち着いて休めています♪

​ もう一例として全身が出ている左のエイさん、「潜りたくても潜れなくて出ている」のと、「潜るという選択肢もあるけど出ている」のでは、意味がまったく違うのです。

​ 「動物の幸せ」は答えがないかもしれませんが(もしくは動物の生態と個性の数だけ答えがありますが)、だからこそ人間側にできることとして「選択肢をめいっぱい用意」して、動物がポジティブに「自分で選べる」ことを増やす努力が必須で有効だと思います♪

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 この水槽はタッチプールではないのですが、そう見えるので触る人が後を絶たず・・・対策として飼育員さんたちは、ここで暮らしてくれているお魚さんやエビさん全員分の隠れ場所を用意しました♪

 もし誰もいないように見えたら、「全員が隠れられる場所を用意するとは素晴らしい!」と、しびれてください♪

​ そういう状況ですと、出ているお魚さんやエビさんは自分の意思で出ているんだなぁと、安心することもできます。

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 さらに、「探す楽しみ」を掲示物で提案!♪これが「動物福祉向上の取り組み」を「コンテンツ化(お楽しみ化・可視化・言語化)する」ということです♪

​ しかも、かなり見つけにくいエビさんたちを提案するという、ハードルの高さが楽しいです♪

 さて、ここで話を百武さんに戻し、学生さんへのメッセージを♪「知識はあったほうがいいですが、興味のあることをたくさん勉強してきてもらえるとうれしいです。自分の強みにもなります。知識がなくても、水族館に入った後でイチから学んだことは大きいので、固定観念を持たず吸収する素直な気持ちでなんでも学ぼうとしてください。情熱が大事です。」本当にそうですね!♪

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 百武さんのお姿は、楽しそうなイベントの写真(上)の左端(下段)です♪魚類班は前任者さんに引き続き女性がリーダーです。

 「飼育員さんに一番大事なこと」を百武さんに伺ったところ、「最初の情熱を絶やさないこと。現実と向き合う。そのうちに、やりたいことができる時がくる。」・・・ほんわかとした雰囲気の内側に秘めた情熱を感じました♪

​ ちなみに百武さんが飼育員さんになる方法を聞きに海きららに来た時に、館長さん(写真中央)が「いい夢ですね」と言って下さったことが背中を押したそうです♪

​ そんな百武さんが取り組んでいる海藻さんに、ぜひ注目してみてください♪

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