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ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第12回 熊本市動植物園 「震災1年後の様子」②現在の園内

 震災から約1年経った園内の様子を、松本さんが案内してくださいました。

 松本さんは、ゾウさんやキリンさんなどを担当されておられます。

​ 熱いプロ意識で動物たちのために行動し続けておられる、素敵な飼育員さんです。

​ 写真は、ホッキョクグマさん宅の前ですが、このように道がひび割れたり隆起している場所が多くあります。ホースは、給水用です。

 多くの命を預かっている、動物園という施設において、水はまさに生命線です。

 しかしながら、震災後1年以上たつというのに、いまだ水道が復旧されていません。ありえない事態ですし、やはり最も困っていることだそうです。

​ 地下水をくみ上げる機械が幸いにも壊れなかったため、飼育員さんたちが消防ホースを何百メートルもつないで、いまだにこのような形でなんとか水を運んでいます。

 中には400メートルものホースを用意する努力で給水している場所もあります。

 中古のホースなので、水漏れの苦労もあります。汚泥用に使っていたホースは水に匂いがついてしまい、当然のことながら動物たちは飲みませんでした(そのホースは取り換えてもらえたそうです)。

 一日も早くどころか一秒でも早く、今まで通りに水が使えるようにする必要があります。動物園では、掃除や動物の食事の用意などにも水を大量に使うのですし。

​ 動物園のような、命が暮らしている施設の復旧こそ、国内外の多くの目が注目もしている、最優先の復興ポイントのひとつだと思います。

 

 この黒い管も、水道管代わりの給水チューブです。

 特に水を必要とするゾウさんたちは当初、240リットル入るタンクを3個トラックに乗せて、水を運んでいたそうです。

 また、動物園の近くに水を汲む場所があるので、一般の皆さんの大行列に飼育員さんも並んで、水を汲んだりしていました。

 園内の多くの場所で、このように地面や壁にひび割れ・傾きなどが見られます。

 電気に関しては、一度停電したものの、24時間で復旧して本当に助かったそうです。長引いていたら、地下水のくみ上げにも影響するので、危なかったです。

 自家発電もありますが足りず、日本動物園水族館協会を介して、大きな発電機が借りれたことも、大いに助かったそうです。

​ 自家発電に関しても、日本中のどの園館も、災害を想定して、十二分な準備が必要ですね。

​ このように大きな地割れや隆起が起こるとは、どれだけ大きな揺れだったことかと、改めて恐ろしくなります。

​ ちなみに、水・電気と同様に重大な「動物たちの食べ物」に関しては、当初から運ばれ続けていたそうで、よかったです。

​ 道路も建物も「まっすぐ」でないところも多く、滞在するうちに平衡感覚がおかしくなってくるほどです。

 こうした状況で、飼育員さんたちは毎日奮闘しています。

​ もちろん、動物たちもがんばってくれています。

 フンボルトペンギンさん宅では、園路が写真のように数十センチも陥没しています。

​ 幸運にもペンギンさんのプールは水漏れせずに済んだので、泳いだりできています。

 このように、来園者を入れられる状況にない箇所が多くあります。

 今回の震災を受け、熊本市動植物園の今後は、継続するのか否かも含めて本気で検討する課題であると私は考えています。

​ しかしながらいずれにしても、まずは復旧を果たすことが基盤となります。決して、後回しにしていい施設ではありませんし、復旧が市民・職員・動物の利益と今後につながると思います。

​ 震災後1年以上経ってなおこの状況ということもよくないと思うので、ひとつずつ復旧していくことを、多くの手で応援できたらと思います。

 園路の中央が膨らんでしまっているのが分かるでしょうか?

​ こうした環境で仕事を毎日している飼育員さんたちの安全のためにも、復旧を猛プッシュしたいところです。

​ また、動物宅でも、運動場が同様に隆起してしまったところがあり、活用できない状態にあります。

 このような状況を直す工事の振動や騒音も、動物たちの負担になることが想定されます。

 完全復旧までまだまだ動物たちにがんばらせてしまうことになります。その日数が1時間でも短くなるよう、応援したいです。

​ 今この瞬間も、不十分な環境でがんばってくれている動物たちがいることを、ぜひ思い出してください。

 液状化で、園路に出てきた砂。災害がもたらす多くの問題に対応する必要があります。

​ 災害が多いこの国で園館等動物施設を運営するということはどういうことか、今一度真剣に考える時が来ています。

​ 正門もまだ工事中です。

 人止め柵や、傾いた建物などが点在する園内。

 それでも開園日(土日祝)には、多くの来園者でにぎわっていました。

 そうしたみんなの想いを今一度力に変えて、復旧を進めたいところです。

 ユキヒョウさんなど肉食の皆さんのお宅も写真のように傾いたため、大牟田市動物園や到津の森公園(北九州市)などに一時的に引っ越しました。

​ 引っ越し先でも大事にされていて、なによりです。

 クロクモザルさんとワオキツネザルさんのお宅も、傾いています。

​ さらに、脱走防止用の水堀にヒビが入って水が溜められないため、外に出られない状況に。

 狭い寝室だけで過ごすことは、動物たちにとって大変な負担になるため、数日で仮のお宅に引越したそうです。

 とは言えあくまで仮宅ですので、一刻も早い復旧を望むとともに、こうした事態に備えて、動物宅新設の際は「寝室の活用」も念頭に置き「十分な広さと予備運動場のある寝室」を建てたいところです。

​ 災害に負けずに、復旧したり学んで進歩してこそだと思います。

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