ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第22回 横浜市立よこはま動物園ズーラシア 「ゾウさんの寝室の一室をおが粉全面敷きに」
①現場の様子と効果♪
動物園で暮らしてくれているゾウさんたちの福祉向上のために、様々な取り組みを続けているズーラシアの飼育員さんたち♪そんな皆さんがついに、「寝室の一室をおが粉全面敷きにする」という段階に進みました!「おが粉」は木の破片で、「おがこ」と読みます。海外では寝室にも砂を山盛りにするのがスタンダードですが、日本の動物宅はそういう前提で作られていないので、課題をひとつずつ乗り越えての、「おが粉全面化」です♪その実際の様子と、どのような効果が見られたのかを、ご紹介します♪
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全景です。インドゾウさんの寝室の一室に木枠をはめて、おが粉が外に出ないようにした上で、全面に敷きました。
こうすることで、厚みを持たせて敷くことができますし、扉のレールにおが粉が入り込むことも軽減できます。
以前からおが粉を部分的に敷く取り組みを行っていましたが(その記事はこちら)、全面化したのは2018年3月14日~です(取材日は6月1日)。
写真は朝の様子。ゾウさんはもう運動場に出ています。
この部屋を使っている、シュリーさんです(23歳♀)♪とっても美人さんです♪
シュリーさんは、おが粉を全面敷きにした日、その部屋にすぐに入りました♪そして毎日その上で寝るほど気に入っています♪足でおが粉を掘ったり背中に乗せることも楽しんでいます♪
金属のボルトを床に打ち込み、そこに木枠をはめ込んでいます。ゾウさんの筋力と知力をもってしても、抜けないようにするためです。
工事は2日にわたって行われましたが、騒音などに対してゾウさんたちが不安定になることはありませんでした。
木枠は硬い松です。防腐剤を加えましたが、水洗いしないので不要かもとのことです。
海外の動物園がゾウさんの寝室に砂を山盛りにできるのは、それを維持できる構造になっているからです。そうでない施設では、木の破片であるおが粉が代替品になります。
また、山盛りにするとおしっこが取り切れなくなりますが、海外の動物園では天井のシャワーシステムにより、汚れをろ過しています。おが粉は洗えませんので、汚れたら廃棄して新しいものを追加します。
木枠の高さは25cmで、10~15cmの深さでおが粉を敷いています。
海外の動物園では、ゾウさんの寝室や運動場に砂山を用意し、寄りかかれるようにもしています。それを少しでも再現すべく、一角に厚く敷いて、高低差を作る取り組みも行なっています。
その高低差を活用したかどうかはまだ検証していませんが、できる限りのことを用意する発想と行動力が、さすがズーラシアです♪
シュリーさんは夜間、4室を使っています♪①室内(おが粉全面敷き)②室内(コンクリ床)③④外(コンクリ床)です。それらをどのように使って過ごしているかは、録画して確認しています。
シュリーさんは外でも過ごしますが、寝るのはおが粉全面敷きの部屋のみだそうです♪
おが粉を入れる前はコンクリ床の上で横になっていましたが、今はおが粉部屋の真ん中で寝ているそうです♪
シュリーさんが満喫してくれてよかったです!♪
さらに、おが粉全面敷きにして以来、シュリーさんの睡眠時間が増えました!♪
おが粉の導入前後で記録を取って睡眠時間を比較したところ、5時間~多くて6時間半だったものが、7時間近くになりました♪このように約1時間増えたことは、大きなことだそうです♪
シュリーさんは、朝5時に日が昇ると目覚めるのですが、おが粉があるとその後で二度寝して、6時頃まで寝ているとのこと♪気持ちいいのですね♪
シュリーさんは、寝室で毎日1~2時間、同じ場所をウロウロするクセがあります。ゾウさんは長距離を歩く生態なので、歩くこと自体は止める必要はないのですが、コンクリ床の上だと、足を傷める恐れがあります。
おが粉の上で歩いて欲しいのですが、これまでの習慣からか、今はまだコンクリ床の上を歩くことが多いそうです。
今後おが粉部屋を増やすなどの対策を行ない、効果を確認することも目標です。
今回もお話を伺わせて頂いた、古田さんです♪古田さんはズーラシアで19年もゾウさんを担当。海外の動物園や生息地にも積極的に勉強に行っています♪
そして3年前から、「寝室に自然物を敷く」という目標に向けて努力をされてきました♪
2年目に「おが粉を一室の4分の1に敷く」という試みを実現。そして今年ようやく、「全面敷き」という試みにまでたどり着いたのです♪
古田さんのように長年にわたり同じ動物を担当して、その福祉向上に本腰を入れて取り組める状況が、超有効なのだと思います♪