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ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第27回 札幌市円山動物園 「本気のこれまでとこれから
④両生類爬虫類さんの福祉向上の取り組み・4「動物専門員さんの努力」♪
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 「は虫類・両生類館」のセンターラボでお仕事中の本田さんです。本田さんは借金をしてまで学びと経験を積み重ねてこられた、ありがたい動物専門員さんです。

 そのズバ抜けた努力の継続と、それによる知識・経験・スキル・人脈の広さと深さを発揮し続けているだけでなく、人材育成や日本の園館変革にも本気で取り組んでおられます。

 その結果、日本各地の動物専門員さんだけでなく、講演・イベント・各種メディアなどからも必要とされ続け、すっかり大人気の動物専門員さんです。が、ご本人は全く浮かれないどころか、43歳にして「大学院に行ってもっと勉強がしたい」とのこと。

​ こういう飼育員さん(動物専門員さん)が日本にいて下さって本当によかった!そして密着取材をさせて頂けて本当にありがたい、と思いますので、本田さんという方の一端やお考えをご紹介したいと思います。

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 バックヤードにて動物さんのケア中。両生類爬虫類さん担当ということで、ケアする動物さんの種類が非常に多いですが、全ての動物さんに関して驚くほどの知識と経験をお持ちです。

 しかもそれにあぐらをかくことなく、常に現場を回って観察。仕事量の多さもハンパないのですが、観察・動物さんの状態の確認・気温等のデータ採取などにも熱く取り組んでおられました。

​ どの動物さんに関しても、「今どういう状況で、こういう取り組みをしていて、これからこういう意図でこういう取り組みをする予定」という説明が、大量に出てきます。

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​ 動物さん宅をバックヤードから開けて、ケア中。

 毎日の熱いケアにより、死にそうな動物さんが分かるので、そういう方は楽に死ねるようにバックヤードに移すと、すぐに息を引き取るそうです。

​ 動物さんがよく死ぬという話では全くなく、その逆で、環境づくりなどのケアが熱いため、皆さん丈夫で寿命が長いとのことです。

​ さらに、当然ながらすぐに諦めているわけでもなく、本田さんは治療の知識もお持ちですし、獣医さんとの協働もできています。

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 バックヤードの各種設備と本田さん。動物宅の設備や設計に関しても、いわゆる飼育員さんとしては恐らく日本一の知識と経験をお持ちだと思います。

 海外の園館に勉強に行かれた際に、建築素材などについても情報収集をされていて、日本の園館で動物宅の新築がある際にその知識が活かされるので、非常にありがたい存在です。

​ 日本の飼育員さん(動物専門員さん)は、建物や素材も含めた全てを把握・コントロールできたほうがいい状況にあります(専門家が園館内にいる状況にまだなっていないので)。

 「自分が担当しているところの、必要なドアのサイズなども知っておくべき」と本田さんはおっしゃっていました。

​ そうした全てが、動物福祉向上につながり、つまりは園館の存在意義にもつながります。

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​ 園内にある林を本田さんと歩くと、植物の知識の豊富さに改めて驚かされます。

 本田さんは「フィールドから学ぶ」「園館で得た知見をフィールドに還元する」ことも、重視しています。とある動物さんのフィールドを体験して湿度のすごさを知り、お宅内に霧吹きをしたことで元気になった例もあるそうです。

 担当している動物さんの、生息地の環境について詳しいことは、当然のようで誰にでもできていることではありません。

 その背景には人員不足や雇用の問題などもあるので、飼育員さん(動物専門員さん)たちが思いっきり学べる体制づくりを応援することも、必須で有効です。

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 ニホンザリガニさんの保全棟です。忙しい中で毎日複数回ここにも足を運んでおられました。ニホンザリガニさんの野生復帰の説明書も制作中だそうです。

 保全に園館が取り組むことで、必要な知見を得ることができ、生息地の環境整備に活かせるとのこと。本田さんがおっしゃると実感が持てます。

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 ヨウスコウワニさんの保全にも取り組んでいます。写真は、本田さんが用意した刺激に反応して、繁殖期の鳴き交わしが始まったところです(鳴いているのでノドが膨らんでいます)。

 本田さん曰く「生き物はナゾだらけ、推測だらけ(図鑑ですら)。園館で生態の解明に貢献できる。園館にできることはいっぱいある。」とのこと。

​ 例えば小さいトカゲさんは、自然モリモリの生息地では見つけることすら困難で、生態の観察などとてもできないですが、園館でなら観察が可能という例もあるそうです。

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 取材と見学をさせて頂いた3日間、本田さんはひたすらこんな感じでお仕事をされていました(黒いのは動物さん宅)。

​ 本田さんのお考えに私も100%同感なのですが、日本の園館には「専門家が必要!」。

 「今は作業員になってしまっている。”広く”ではなく、ポイントで詳しくなる。それでこそ、現地の保全までできる。10年でもダメ。一生をかけないと。それが、自分(飼育員さん・動物専門員さん)のブランド化にもつながる。専門性にしか需要がないのだから、専門性を作るべし。それがモチベーションアップにもつながるのだから、ホイホイ異動させるな」・・・本当に、おっしゃる通りです!♪数年単位での異動など、費用対効果がなさすぎて、行政運営の場合なら「税金の無駄遣い」です。

​ せっかく本田さんのような実例・前例が存在して下さっていて、実際に有効どころの話ではないのも証明済みなのですから、飼育員さん(動物専門員さん)という仕事と体制の認識を改める時が来ていると思います。

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 動物さんたちを確認してまわる本田さん。この熱心な感じと孤独な感じが、本田さんらしいと私が勝手に思った1枚です。

 なぜなら、ズバ抜けた努力をし続けている飼育員さん・園館人さんは、たいがい孤独だからです。本気度がここまで違えば、そりゃ同志は少ないです。

 そうなると、ハラワタが煮えくり返ることも多そうですが、皆さん達観していると言いますか、淡々と静かにズバ抜け街道を歩み続けながら確実に状況を変えている方ばかりです。

​ ということで実は皆さん、全く孤独なわけではなく、じわじわと仲間を増やしているのです。それこそが動物福祉向上にもつながるからです。そこに本気で向き合っているからです。

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 本田さんと共に、両生類爬虫類さん・猛禽類さんを担当されている皆さん(本田さんは猛禽類さんのプロでもあります)。

 これがまたたまげることに、皆さん激熱♡日本各地で何千人という飼育員さん(動物専門員さん)を見てきた私が、「す、すごい熱さだ!」と驚くレベルです♪

 本当に熱心で誠実で行動力と伝えたい想いを発揮できているという、素質+本田さんのもとで経験を積んだ効果に、感動しっぱなしでした。

 もちろん熱意だけでなく技術的にもモリモリ習得済みで、本田さんが「いつ辞めても大丈夫」なレベルとのこと。ただただ驚くばかりです。そして、動物さんたちにとって、非常に安心できる状況ということです。

 本気の専門家が一人いたら、これだけの人材が増えるのですから、やはり飼育員さん(動物専門員さん)の働き方に対する見識を変えたほうが得策です。本田さんが示して下さっているように、「専門家+チーム体制」が必須で有効です。

 こうした体制整備においても、本田さんから学ぶことは多いですので、ますますのご活躍に期待が膨らむばかりです・・・と、本田さんお一人にあれもこれも頼る現状から変えねばですが、まずは学ばせて頂く段階だと思います。

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