ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第27回 札幌市円山動物園 「本気のこれまでとこれから」
⑨アジアゾウさんの福祉向上の取り組み・3「室内の工夫」♪
アジアゾウさんの新居、室内での、福祉向上の取り組みです。こちらは主に女子チーム(3名)が過ごす空間で、来園者は見学可能です(左側の壁の奥にケアとトレーニングを行う部屋があり、さらにその左にも部屋があります。そちらはゾウさんだけで静かに過ごすタイプ)。
写真ですとあまり広そうに見えないのですが、実際に肉眼で見ますと広いです。
砂を1m敷いている上に、その下はそのまま地面で水はけがいいです。地盤がしっかりしているので、コンクリ基礎がなくても大丈夫だそうです。砂は、入れ替えるのではなく、減ったら追加します。
全身浸かれるプールもありますし、日光も入ります。降雨装置や暖房もありますし、フィーダーも各種用意されています。室温は23度前後に保たれています。
28歳のシュティン母さん・娘のニャインちゃん(6歳)・16歳のパールさんが、暮らしてくれています(年齢は2019年10月1日時点のもの)。
夕方の掃除タイムの現場写真で、広さが少しでも伝われば。
ちなみにゾウさんたちは外(冬は別室)で待機してくれています。
円山動物園は、ゾウさんと人が同じ空間に入らずにケアをする「準間接飼育」という手法を採用しています(檻越しにゾウさんの体に触れることはあるので「準」です)。
この手法は、ゾウさんと人、双方の安全度が高まります。何より、完全非暴力という点が素敵です。ゾウさんと同じ空間に入らないので、ゾウさんに対して暴力による恐怖支配をする必要がないためです。
天井から吊り下がっているのがフィーダーです。ゾウさんの食べ物が入っています。
これらのフィーダーが夜間もタイマーで降りてくるため、ゾウさんたちは野生の生態に近い「1日17時間食事」という暮らしができています。
仕切り棒のうち、右端に近い3本だけ表面がザラザラしているのは、ゾウさんが足や体を掻くための工夫です。
室内最奥から、お客さん側を見た様子です。ゾウさんたちは夜間もここで自由に過ごします(係留されません)。
ちなみにゾウさんたちは、夜の9時や11時に寝るそうです。そして2~5時間寝ます。砂が気持ちいいらしく、朝日で起きない時もあるそうです。
砂の上ですと、ゾウさんも横になって寝ます。コンクリ床だと立ったまま寝る例も少なくなく、「ゾウさんは横になって寝ない」と誤解されていた時代があるほどです。
円山動物園のゾウさんたちには、朝日でも目が覚めないほど気持ちよく寝てもらえて、本当によかったです!
砂敷きの様子です♪表面は乾いていますが、少し掘ると湿った砂が出てきます。
できればもっと乾燥を抑えたいそうですが、濡らした状態でゾウさんたちが踏むとカチカチになってしまい、重機で掘り返さねばならないので、人手が必要とのこと。
こうした課題は動物さん宅に永遠にあるものですし、現状でもなかなか素晴らしい環境だと思いますし、熱い動物専門員さんたちによる今後の取り組みが楽しみなばかりです。
ゾウさんの足跡♡ゾウさんの重さで砂が盛り上がっていますね。それだけの体重があるゾウさんにとって、足の健康は生命線です。砂敷きは足にもやさしいです。
そんな砂敷きでよかった!という想いで、「幸せの足跡」と私は呼んでいます。
幸せな状況なので、ウキウキしてゾウさんの足跡と自分の足を並べてみました♪
ゾウさんの足の裏の様子がよく残っています。ちなみに私の足のサイズは24.5cmです。
天井に設置された配管から、雨が降る様子(写真は左側の部屋のもの)。
1日1回は降り、夜間もしっとりしているようにしています。ほこりも抑えられます。
暖房はもちろん、温風がよろしくないエアコンではなくパネルヒーターによる放射熱です。巨大な換気システムと合わせて、もあっとした感じが軽減できるそうです。
左上の穴は、フィーダーです。背後に、食べ物を入れる箱が設置されていて、ゾウさんは鼻を入れてゲットします。簡単には食べ物を得られないことで、飽きないようにしたり、食べ物を得る楽しさを創出しています。
これもフィーダーです。穴の向こうに容器を設置して、そこに食べ物を用意します。
実際の様子はp.14(5ページ後)でご紹介します。
壁の向こう側はお客さんの通路です。ゾウさんたちからは、こんなふうに見えています。
プールです♪水は循環水ですが、2ヵ月に1度は取り替えます。掃除は2週間に1度行います。
プールに入るかどうかはゾウさんの気分次第です。当然ながらショーとして入らせることはしません。ありのままのゾウさんの日常こそ魅力的ですので、何回も会いに行って、その都度の様子にしびれてください。
ちなみに私は、円山動物園でもチューリヒ動物園(スイス)でも、3日通っても「プールに入るゾウさん」は目撃していませんが、他に素晴らしい要素がいろいろあるので、なんてことなかったです。強いて言えば次回の楽しみが1つ増えました。
プールの水中が観察できる場所もあります。朝日が差して素敵ですね。
このプールがある部屋をシーシュくんが使う日もあります。その時のシーシュくんは、プールを大満喫してずっと入って楽しそうに過ごしていたそうです。
ゾウさんが入った時の様子は、左のモニターで知ることもできます。
プールを大満喫するシーシュくんです!写真はゾウ班にご提供を頂きました(4点)。
写真で見ても、私たちまでうきうきしてきますね!♪
こうした場面に出会うチャンスが近くにあるとは、札幌市民の皆さんがうらやましい限りです。せっかく近いのですから、「こういう場面に出会えたらラッキー♪」くらいの余裕で、何度も会いに行ってください。そうしますと、「プール満喫」以外でも様々な場面で、動物専門員さんによる動物福祉向上の取り組みとその効果に気づくようになって、より幸せ共有体験を楽しめるのでオススメです。
プールの深さをお伝えすべく、身長171cmの本田さんの写真でご紹介♪
ちなみにゾウさんが全身ではなく足だけ入った時など、体の濡れた部分だけ色が変わるのも魅力的です。
入れる水場があってこその光景ですので、「幸せの模様」と私は呼んでいます。
最後にシーシュくん用の室内の紹介です。砂敷きの部屋が2室と、トレーニングルームがあります。
シーシュくんは、トータル5時間くらい横になって寝るそうです。砂にゾウさんの形・口元のよだれ・鼻のシワが残っているのが見て取れるほど、ぐっすり寝ています♪
ミャンマーから到着した初日から、横になって寝たとのこと。警戒心や緊張で横にならないかもと想定していたそうですが、ほっとしたり疲れたりしたところに、砂敷きが気持ちよかったのかもしれませんね。
ちなみにその大事な砂は、スプリンクラーで洗います(毎日~2・3日に1度)。
暖房は、放射(パネルヒーター)と、遠赤外線タイプを併用しています。
置いてある枝や丸太は、その下に食べ物を埋めたり隠したりして、楽しんでもらうためのものです。次項は、そうしたケアの紹介です。