ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第27回 札幌市円山動物園 「本気のこれまでとこれから」
⑩アジアゾウさんの福祉向上の取り組み・4「ケアの数々その1・右側の部屋」♪
室内でのケアのご紹介♪主に女子チームが使用している、室内のお客さんから見て右側の部屋から。
まずはケアの基本である掃除です。掃除は、飼育員さんにとって非常に大事な仕事のひとつです。状況や排せつ物から、動物さんたちの健康状態などが推測できるからです。
そんな頭と体がフル回転の掃除を朝夕2回します。それを毎日本気で誠実に前向きに継続できるかどうかが、飼育員さんに問われる重要な資質のひとつです。
もちろん、「今日の掃除はササっと最低限で済ませて、時間を作って別の福祉向上に取り組む」といった変化をつけることもあります。これはこれで本気で考えた方策です(どの園館も人員数が非常に限られているので)。
左側に用意されているリンゴなどは、掃除の後で室内各所に設置します。
園館動物さんのケアに必須の存在。それは自分で学び・考え・行動する飼育員さん(動物専門員さん)です。
右側の動物専門員さんは、大ベテランの吉田さんです(「吉田さん」が2名おられます)。
円山動物園の複数の動物専門員さんから、「吉田さんというすごいレジェンドが〇〇をされた」というお話を何度も伺っていたので、てっきり歴史上の偉人的な、もう園にはおられない方なのだと思い込んでいましたが、まだまだ現場でご活躍でした♪
そんな素敵な大先輩とお仕事できるとは、幸せ&学びの大チャンスですね♪
このように、いろいろな世代に熱い方がおられて、しかも世代間で前向きに高め合えていて・・・円山動物園の底力のすごさにしびれました。
しかも、こうした園館変革の核となる方々を残しつつ、人員の入れ替え(他園館から熱い動物専門員さんたちを採用)をするという、最も本気度の高い改革を実施。円山動物園のこの本気の取り組みが、日本各地の園館の光となってくれるはずと、期待しているところです♪
貴重な情報源である、うんこを回収した小林さん。録画映像からどのゾウさんのうんこかを判別し、ストレス等の検査に出しています。
また、うんこを堆肥化する施設が完成したので、有効活用もしています。
生息地でも、ゾウさんのうんこが植物のタネを運んだり肥料となることで、森が維持されています。ゾウさんは自然界が無駄なく育てあっていることを教えてくれる存在でもあります。
ゾウさんのうんこの重さを量る野村さんと、見守る吉田さん。野村さんが、何かの健康指針になるのでは?と考えて、始めたところです。
このように若手が考えたアイデアを遠慮せずに言う・実践できる環境であるのもさすがです。
ゾウ班では、萎縮せずにのびのびと楽しく前向きに仕事ができるため、福祉向上のアイデアがより出てきそうです。
1回の掃除で集まった量に驚いていたところ、「いえいえ今日はとっても少ないほうです。倍以上ある日もあります」とのことで、2度びっくり。
こうした仕事を毎日誠実に楽しそうにされている皆さんは、一体どれだけゾウさんが大好きなんだろう?と思います。きっと、動物専門員さんにしか分かりえない領域の想いがあるのだろうなぁと♪
フィーダーに乾草を入れています。この中にもリンゴのかけらを入れたり、野菜ジュースを霧吹きでかけてみたりと、ゾウさんたちが楽しく過ごせる工夫をします。
乾草を詰めたあと、吊り上げられたフィーダー各種。
タイマーで順番に降りてきて夜間も食べられるので、ゾウさん本来の生態に近い、「17時間の食事時間」を実現。
ゾウさんたちが飽きずに過ごせますし、本来の生態に近いペースで食事をすることは、胃腸などにも良さそうです。
さらにゾウさんたちにとって楽しいことをひとつでも増やすべく・・・穴を50cmほど掘ってリンゴなどを埋める→その上に、遊ぶ用の枝も埋める・・・を、何か所も用意します(写真は吉田さん)。
「枝」と言ってもゾウさんサイズですので、人類には大きくてヘビーです。
でも、リンゴ(匂いですぐ分かります)を探す・得る楽しさだけでなく、掘ることで足の筋肉も強化することができるので、取り組む甲斐があります。
太い枝の他に、「引っ張り出して折って遊ぶ」用の細めの枝も設置します。
穴を掘るのも、簡単にできることではありませんが、野村さん(右)はさすがに速いです。
そして、猛禽類さんなどを担当する班の佐藤さんが登場。道具の使い方を学んで、トライしていました。こうした横のつながりも非常に大事で、園が前進するための大きな力になります。
園内交流はもちろんのこと、園館をまたいだ人事交流も、園館変革に有効だと考えています。この日も、他園の飼育員さんが見学に来られていました。
ゾウさんは軽々持ち上げる枝も、人類には軽くないです。が、動物専門員さんたちが楽しそうで素敵です。しかもさすがプロ、ひとつひとつの行動が速いです。
こうして、夜間用の準備が整っていきます。動物専門員さんたちのお仕事ぶりに、惚れ惚れうきうきする光景です。
この場面の動画は↓です。
リンゴなどを埋めた上に、枝を組むバージョンもあります。とにかく、「すぐに食べ終わって、その後ずっとヒマ」ということを減らすための努力が続いています。
人間だと3人がかりでやっと組んだ枝を、ゾウさんはあっという間に崩します(その様子は2ページ後)♪
すごいパワーで素敵ですし、その一瞬でも楽しいこと・やることがある大事さが分かっていて、「あっという間なんだよね~(笑)」と笑顔で仕事ができる動物専門員さんたちも、素敵です♪
ゾウさんが掘った跡がクレーターのようになっているそうで、足も心も頭も使った痕跡でもあります。
壁の向こう側にもフィーダーをこんなに多彩に用意。乾草や野菜などをセットします。
ゾウさんは鼻を出してゲットします。心と頭と鼻をたくさん使う機会でもあります。
乾草は、フィーダーに詰めるほうが取り出す時間がかかって、刺激になるそうです。ちなみに国産の乾草です。
この光景の動画は↓です。
右と左の室内の間にある部屋で、室内の掃除が終わるのを待っているニャインちゃん。これは4月の写真で、その後の検討の結果、今は外の運動場で他のゾウさんたちと過ごしながら掃除を待っています(掃除終了後は出入り自由)。真冬は外だと寒いので、掃除の間はこちらの部屋で待機してもらいます(真冬の掃除時間は約1時間ほど)。
ということで、円山動物園のゾウさんたちがこうした部屋で過ごす時間は、1日にたったの15~30分です(真冬以外)。それはハズバンダリートレーニングの時です(3ページ後に紹介)。これはもしかしたら世界最短かもしれず、間違いなく世界最高峰レベルの、福祉向上の取り組みです。
ではなぜこの写真を紹介したかと言いますと・・・この状態は掃除中の短時間の滞在ですが手を抜かず、乾草が用意されているというこまやかなケアっぷりをお伝えしたかったのです。
ちなみにこのPCウォール(ハズトレ用の施設)を開けてつなげると通路になり、シーシュくんと女子チームで部屋の交換をすることもできます。いろいろ工夫されていますね。