ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第11回 横浜市立よこはま動物園ズーラシア 「ゾウさんのためにしていること」
⑤寝室の工夫(その1)
動物園で暮らしてくれている動物たちが、一番長くいる場所、それは寝室です。
例えば、ズーラシアの開園時間は9:30-16:30の7時間ですので、それ以外を寝室で過ごしていると計算すると、実に17時間です。
シュリーさんは2部屋、ラスクマルくんは3部屋を使えるようにはしていますが、それでも限られた空間での17時間となります。
そこで飼育員さんたちは、少しでも快適に退屈しないで過ごせるよう、様々な工夫をします♪
写真はシュリーさんの寝室ですが、例えば左に見えるのは、おもちゃ用の木材です。取り出すこと自体も楽しめるように、キツくはめ込む努力をしています♪
これは、フィーダーという器具で、ちょっとしたごはんが入っています。
ゾウさんは、長い時間をかけて食事をする生態ですし、「木から葉をもぎ取る」などの「手間」も、本来はあることです。
そうしたことを少しでも再現すべく、「食べるのに手間が必要」なようにしたものがフィーダーです。
例えばこのフィーダーは、揺らすことで、小さな穴からニンジンなどが落ちてきます。こうした手間をかける食べ方のほうを、動物があえて選ぶことも多いということは、実験でも証明されています。「食べ物を自分の力で得た」という充実感や達成感が、その要因と考えられています。
寝室には、各種枝葉も大量に用意されます♪枝を折ったり、葉をもぎ取ったりと、「すること」が多い点も有効です♪
自然物ならではの、香りや感触もいい刺激になりますし、栄養素も期待できそうです。
さらに竹も運ばれてきました!♪しかも、こんなに大きな竹を、写真がブレるほどのスピードで運ぶとは、すごいです。
とにかく飼育員さんは仕事のスピードが速くて、密着取材でついていくのが大変なほどです♪
枝葉などの自然物を用意するのって、大変なんです。「巨大な生鮮食品」みたいなものですから。
業者さんから買うこともありますが、園内で自分たちで切ってきたり、他の動物が残したものを運んでもらったり・・・
しかもゾウさんのパワーと食事量により、あっという間に消費されてしまいます。
だからと言ってイヤになるのではなく、「すぐになくなるほど満喫してもらえてよかった」「もっとできることはないかな(食べ過ぎも考慮しつつ)」と考えるところが、さすがズーラシアのゾウさんチームです♪
寝室での様子も録画しています。新しい取り組みをした日は、どういう反応をしていたか、映像でも確認します。
普段は、2~3時間横になって寝た後で、起きて水を飲んだりうんこをしたりして、また寝るそうです。
ちなみに、シュリーさんとラスクマルくんは、オリ越しに寄り添って寝ているそうです♡
海外の動物園では、夜間も室内外出入り自由にしたり、ペアで過ごせるようにして、うまくいっているところもあります。そうした前例を踏まえて、ズーラシアのゾウさんたちの今後も検討するそうです♪
さらに、夜間だけ機器を装着して、運動量を計測・把握しています(ゾウさんを鎖でつなぐ「係留」はしていません)。
白い輪の中にある小さなセンサーで、「起きているか、寝ているか」などが計測でき、睡眠時間が把握できます。
今後は、さらにセンサーの精度が上がり、ゾウさんに異変が起きた時にいちはやく気づけるようになることが期待されているそうです。
寝室には、他にもいろんな工夫が用意されています。天井の黒い板は、暖房です。
吊り下げられている黒い袋はフィーダー。高い位置に設置することで、ゾウさんが鼻を伸ばして食べ物を取るという動作が再現できます。
簡単には食べ切らないことで、「すること」のある時間を増やすこともできます。
2階に上がったところです。写真のフィーダーは、ラスクマルくん用。鼻で揺らして、中のごはんを出します。
こうした工夫の数々は、ゾウさんがケガをするなどの事故が起きないよう、慎重に検討した上で設置されています。
これはヘイネットというものです。ヘイは乾草のことですので、それを入れるフィーダーです。
東山動植物園(名古屋市)の飼育員さんが、オーストラリアに研修に行って知ったものを、教えて頂いたそうです。
そうした横のつながりで、動物のための工夫が増えているというのも、素敵です♪
2階には散水器(ミスト)も設置されています。夏は暑さ対策、冬は暖房による乾燥対策で使用します。
「60秒出て止まる」などのセッティングもできるそうです。