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ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第14回 大牟田市動物園 「動物福祉を伝える」①モルモットさんの福祉向上♪

 大牟田市動物園(福岡県)、3度めの登場です。なぜなら、たゆまぬ努力で前進を続けていて、参考になるポイントが満載だからです。時間と労力と資金をかけて何度も学びに行く甲斐があるのです。大牟田市動物園は、国内外の園館の今後を真剣に考える上で、ひとつのモデルケースであると私は考えています。その理由は、園のコンセプトを「動物福祉を伝える動物園」と定めて、その実践にまい進し、大きな成果を挙げているからです。①コンセプト(戦略理念)を持つこと②それが動物本位(保全)であること③説明の重要性を理解して実践していること・・・この、3点こそが園館の必須要素なので、実践して効果まで実証している大牟田市動物園は、日本の園館のパイオニアです。そしてこれも私の持論ではありますが、「園と飼育員さんたちが、園にいる動物たちの福祉向上に取り組む」+「その意図や効果などを、説明して伝える(⇒来園者は動物の状況が良くなったことを理解し、うれしく感じる)」=「保全教育(動物と一緒に幸せになる楽しさを知る人間を増やすこと)」です。園館は、保全教育施設なのです。であるのに、「保全教育では集客できない」と思い込んでいる園館が多いですが、それも大牟田市動物園は打破してくれました(大牟田市動物園の取組みの数々は、保全教育であると私は確信しています)。来園者の心を動かし、地元の皆さんの心を動かし、マスメディアの心をも動かすに至っている大牟田市動物園の日々の実践を、ぜひご覧ください。 (全10ページ/2017.12.6 up)

 (※なお、文中の言葉遣いに関し、私の方針として「無意識のうちに動物を下に見る意識を変える」ことを意図して、「人に使わない言葉は使わない」「動物に”さん”づけをする」といった試行をしています。一度、動物に関する文章を敬語で作ってみると、普段いかに見下した言葉遣いをしているかが、実感できると思います。そのような言葉遣いで、「動物と一緒に幸せになる楽しさを知る人を増やす」保全教育ができるでしょうか?また、大牟田市動物園全体で取り組んでいるところも素晴らしいので、今回はあえて飼育員さんの個人名は明記しませんでした。)

 園内マップ看板に、コンセプトが明記されています!!

 コンセプトがしっかりあり、しかもそれが動物福祉(=保全)であると、その園館は活性化します♪

 園館運営を本気で考えたらたどり着く手法・理論です。今のところは大牟田市動物園しかないと思われますが、やがてスタンダードになるでしょう♪

 紙の園内マップの裏も、ほぼ3分の1を使って、コンセプトが説明されています!!園の意図・方向性・本気度が熱く伝わってきます♪

 動物福祉向上のために、①「環境エンリッチメント」と②「ハズバンダリートレーニング」を実践しています♪

 私なりの説明で書きますと、①は、「その動物の生態と個性が必要とする選択肢を増設」すること。②は、健康管理のための「受診動作」トレーニングです。

​ どちらも、園の説明にあるように「動物が心身ともにより健康な暮らしを送れるように」行います。

 大牟田市動物園の、いわゆる「ふれあい広場」は、現在このような名称となっています♪

 動物園によくある「ふれあい」は今、岐路に立っています。動物を道具扱いするような内容では、「動物って、こういう扱いでいいんだ」と思う人を増やす「逆教育」になるからです。

 そうした現状に園内外から疑問の声が上がり始めています。私も、何年も前から違う手法を提案し続けています。

 大牟田市動物園の皆さんも、「動物福祉を伝える」というコンセプトに沿うよう、「意図の設定→実践→動物や来園者の反応をフィードバックして改善案作成」を繰り返しています。そのすべての過程が参考になるほどの、真剣な取り組みです。

 そして、このような名前になりました♪「”モルモット=ふれあい”のイメージをなくしたい」「モルモットの様子をしっかり観察して、より濃い思い出を作ってほしい」という熱い想いの詰まった、素敵なネーミングです♪

​ 「動物と心のつながりを作る」ことも、保全教育のひとつだと私は考えているので、つながりを感じる「モルモットとわたしの」という名称は、ナイスアイデアだと思います♪

 では、実際の「モルモットとのふれあい体験」はどのように実践しているのでしょう?

 ちなみにイベントの名称はまだ「ふれあい」ですが、園のパンフやHPにはさすがの説明が!「動物にも感情があります」「動物への思いやりの行動を育むことを目的としています」と明記されています!

 モルモットさんをヒザに乗せるのではなく、まずは台の上にいるモルモットさんの表情や行動などをよく観察します。

 その後、モルモットさんの視界に入る位置から、そっと手を伸ばして頭に触れさせてもらいます。理由は①背中やお尻を急に触るとびっくりしてしまうモルモットさんもいる②体だとくすぐったくてゾワゾワしてしまうモルモットさんが多いからです。

​ 台には、モルモットさんが隠れられる場所が用意してあり、居心地の良さも考慮しています♪

 飼育員さんが付いて、かなりこまめに説明をし続けていて、素晴らしいです♪

 「モルモットさんが草をいらないときは、あげないよ」など具体的なので、教わるほうも行動しやすいです。

 モルモットさんが怖がらないよう、子どもたちに「動き回らず座ってあげようね」と促し続けます(大人はウロウロしないので、立ってOKです)。説明と敷物が効果をあげています。

 思いやりの心を育むことにもつながっていますし、座ることでモルモットさんと同じ目線になることができます。

 相手の行動を変える要素のひとつは、「こちらの本気度」です。そして、子ども扱いするのではなく本気で向き合うほうが、敬意も感じて素敵です♪

 説明されれば、たいがいの人は理解します。その意図や意義まで理解してもらえることも多いです。

 例えばここでは、飼育員さんの説明を親御さんがマネして、子どもに伝えてくれるそうです。

​ また、「前はモルモットさんをヒザに乗せたのに」と言われた時は、「今のやり方のほうがモルモットさんはよさそうだね」と説明すると、理解してくれるそうです。

 モルモットさんは、本来の暮らしでは空から猛禽さんに襲われたりして食べられちゃう側です。なので、ひらけた場所で実施されることが多い、今はやりの「モルさん廊下」(写真。大牟田市動物園での名称は「モルロード」)は、モルモットさん的には「ひ~っ!」と思っている可能性があるのでは?だからエネルギー消費をしてまで走るのでは?との懸念があります。

 そこを解決するためには、①屋根や壁で「ひらけた状況」をなくす②存分にダッシュできる幅を持たせる③そもそも自主参加制にする・・・などが考えられます。

 大牟田市動物園では、試行錯誤の結果、現在はこのような形になっています。自主参加制なので、「ふれあい体験」に参加してもいいと思ったモルモットさんだけが来ます。なので、モルモットさんの数は数名~30名まで幅があるそうです。

 一応食べ物ももらえますが、来なくてももらえるので、それで誘導しているわけではありません。また、来園者におびえるより慣れるほうがモルモットさんにとって良いので、そのための取組みも行っています。

 写真は「ふれあい体験」の時間が終わって本宅に帰る様子ですが、登ってきているモルモットさんたちもいますね。むしろそういうモルモットさんが多いので、本宅にいてもらうよう、飼育員さんが野菜を用意しているほどです。それだけ、「ふれあい体験」に参加することが「いやなこと」ではないのだと思います♪そうなるだけの、飼育員さんたちの取組みの成果です♪

 

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