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ZOO AQUA STORY☆ by つまき♪
第6回-1 大阪市天王寺動物園 「動物本位の仕事」:クロサイさん宅の用意と、カバさん宅の掃除♪

  今回は、大阪市天王寺動物園の飼育員さん、油家さんのお仕事をご紹介♪油家さんに丸一日の密着取材をするのは2回目です。本の執筆にあたり密着取材をした前回、「本気で仕事をしている飼育員さんは、全秒かっこいい!」と思いました♪そして今回は、「動物本位の仕事って、こういうことでしょう!」と改めて感激♪「動物本位」とは、私の造語ですが、「動物を出発点として考えること」です♪動物園は、動物をベーシックコンテンツとする施設ですので、「動物本位」は基本中の基本です。また、この発想法で「動物の選択肢増加」を実現したほうが、来園者の学びや楽しみも増え、結果、園の利益も上がるのです♪「人間本位」で、「掃除がめんどくさい」「来園者におもしろおかしくウケて集客が増えればいい」といった状況になることは、自滅の道なのです♪

 そうした基本を再確認させてくれた油家さんの仕事ぶり、なるべく多くをお伝えしたい!ということで、12ページになりました♪それくらい、本気の飼育員さんの仕事は多岐にわたるのです。飼育員さんが、日々どのように動物たちをケアしているのか、ぜひじっくりご覧ください♪  (全12ページ/2016.12.3 up)

 朝はまず、職員さん全員でラジオ体操と連絡事項確認を行います。そしてお仕事開始。担当しているムフロンさん宅へ向かい、ごはんの乾草を用意。

 そしてクロサイさん宅のバックヤードへ(写真)♪現在、天王寺動物園では、3名のクロサイさんが暮らしています。

 クロサイさんは、1名ずつ別の場所で過ごすため、準備も掃除も3ヶ所分です。それを油家さん一人でこなします。

 まずは、サブパドックと呼ばれる、来園者からは見えない場所にあるミニ運動場の準備。

 植物を食べながら移動するクロサイさんの生態を、少しでも再現するために、枝葉を設置します♪

 来園者が見学するメインの運動場でも、クロサイさんのためにいろいろ準備。

 枝葉を設置したり、フィーダーにおやつを詰めたり(写真)♪フィーダーとは、ごはん容器のことです。ごはんを取り出すのに工夫や手間が必要な作りにしてあり、動物たちが頭や体を使ったりヒマつぶしできるようになっています。

 野生動物は、食事に時間や能力を使う生活タイプが多いので、動物施設ではやることがなくヒマになってしまうのです。

※動物宅の運動場について「放飼場」という一般名称を使わない理由=「人間に使わない言葉は動物にも使わない」という手法で、「動物を無意識のうちに下に見ている状況の改善」に挑戦しているためです。「飼育員さん」以外は、「飼育」という言葉も使わないで文章を書くようにしています。

​ 枝葉を差す台も用意してあります♪クロサイさんは、顔が上を向く角度で植物を食べることも多い生態なので、枝葉を地面に置かず、高さを創出しています♪

 3名のクロサイさんたちを、それぞれの場所に誘導します。①メインの運動場②サブパドック③室内、の3ヵ所です。来園者から見えるのは①のみです。

 クロサイさんは繊細なので、なかなか移動してくれないこともありますが、追い立てず、クロサイさんが自分から動く気持ちになるのを待ちます♪

 また、ラジオを流して、音に慣れてもらうことと、作業音を消す工夫もしています。

 

​ 飼育員さんが運んでいる、大きな荷物はなんでしょう?

​ 目隠し用の幕です。「飼育員さんに相手してもらえるかも?」などを期待して、扉の前に長時間滞在するのを防ぐためだそうです。

  「扉の前という狭い場所で長居するよりは、広いところ(運動場)にいてもらう方がクロサイさんの運動にもなるし、来園者からも見える」という意図での工夫です♪

​ 表からは見えないこうした努力の積み重ねで、クロサイさんたちの心身の健康度合いが高められているのです♪

 油家さんの担当は、クロサイさんとムフロンさんですが、代番という任務もあります。休みの飼育員さんの代わりに担当することです。

 この日は、カバさんの代番なので、急いでカバさん宅へ。「遅くなってごめんね~」と、声をかけながら準備をします。

 カバさん宅の運動場に青草を設置して、カバさんを寝室からそこへ誘導します。と、文章で書くとほんの1~2行ですが、実際の仕事内容はもちろんもっと複雑です。

​ カバさん宅の掃除。水で流したりほうきで掃いたり、飼育員さんの仕事はとにかく掃除が多いです。大変そうではありますが、清潔さは動物の命に直結するので、重要です。

 床だけでなく壁なども洗います。地味に大変な仕事です。もしかして油家さんは掃除が好きなのかも?と質問したところ、そうではないと聞いてびっくり!とてもそうは思えない丁寧さで取り組んでいて、頭が下がる想いです♪

 ちなみに好きな仕事はエンリッチメント(動物の生活環境や一生を豊かにすること)だそうです♪

​ 動物にとっては狭い寝室も、掃き掃除をするとなると結構な面積です。かなりの速さで着々ときれいにしていきます。

 飼育員さんの仕事である、掃除・観察・エンリッチメント・ハズバンダリートレーニング(健康管理)をすべてしっかりするために、速くできる掃除は急ぐそうです。

 海外の動物園のように、時に100人近い飼育員さんたちが、早番と遅番に分かれて仕事をすることで、長い時間を動物のケアに費やせるようになることが、必須だと思います♪

 寝室のプールは、2日に1回水を入れ替えます(ポンプの性能上、それが最善だそうです)。プールの掃除だけでも、このゴミ(草など)の量!水を含んで重くなったゴミを、抱えて運び出します。

 飼育員さんとして当たり前の仕事をしているとも言えますが、基本的に一人仕事なだけに、どこまでやるかはその人次第なのです。

 園で暮らしてくれている動物たちが少しでも快適で楽しいようにと、動物を出発点として考える「動物本位」で仕事をしているのが油家さんです♪

 その、手抜きなしの仕事ぶりを、引き続きこの調子で詳しくご紹介していきます♪

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